樹脂・プラスチックの成形加工プロセスでは、原料の加熱融解や射出成形、押出成形の工程において独特の焦げ臭や有機溶剤臭が発生します。これらは近隣住民からの臭気苦情を引き起こす主因となるだけでなく、工場内の作業環境悪化にも直結するため、実効性の高い脱臭対策を講じることが極めて重要です。
本記事では、工場長や生産管理担当者の方に向けて、成形現場の課題に即した脱臭方法や、発生成分ごとの特徴について詳しく解説していきます。工場の安定稼働と、地域社会との良好な環境共生の両立にぜひお役立てください。
| 設置場所 | プラスチック製造工場 (塗装工程・ダクト内) |
|---|---|
| 臭気対象 | 塗装時に排気される有機溶剤臭 |
| 脱臭方法 | 活性炭吸着脱臭 (吸着脱臭フィルター KCF-10FL) |
プラスチック製品を製造するメーカーの新工場立ち上げにおける事例です。塗装工程から排気される有機溶剤臭の対策が課題となっていましたが、ダクトを屋上まで伸ばすのはスペースとコストが膨大にかかるため、排気の途中でスマートに臭気処理を行える方法を模索されていました。
工場建設地は工業エリアの境界付近で比較的臭気には寛容な地域でしたが、200m先には住居地域が広がっており近隣苦情リスクを無視できない状況でした。そのため、大型装置に頼らずに各排気ラインの途中で確実に溶剤臭を除去できる、省スペースかつ信頼性の高い脱臭対策が必要でした。
排気ダクトの途中にそのまま組み込める吸着脱臭フィルター「KCF-10FL」を導入しました。新設工場の段階からあらかじめダクト設計に寸法を組み込めたため、無駄なスペースを一切とらず排気系統へぴったりと収まるスマートな設置が実現。電源も不要なため設備の大がかりな工事を回避できました。
導入後は排気口付近の溶剤臭が大幅に低減し、懸念されていた周辺への臭気拡散を完全に遮断。住宅地からの苦情も一切発生していません。メンテナンスは定期的な活性炭の交換のみで運用できるためランニングコストも抑制され、最小限の設備投資で最大の防臭効果を発揮しています。
| 設置場所 | 樹脂成型工場 (成型工程・排気系統2系統) |
|---|---|
| 臭気対象 | ビニール成型時の焦げ臭 (有機溶剤系、プラスチック熱分解臭) |
| 脱臭方法 | 消臭剤スプレー装置 (マイクロゲル消臭剤スプレー装置) |
ビニール素材を扱う樹脂成型工場の事例です。もともとあった工場の周辺に新興住宅地が造成されたことで、成型工程から発生するビニールが焦げたような臭気に対する近隣苦情が発生しました。排気口での測定値は悪臭防止法の規制基準値を超えており、行政からの改善指導が一歩手前まで迫る深刻な状況でした。
しかし、対象となる排気系統は総計約1,000㎥/minという極めて大きな風量であり、一般的な大型の物理フィルターや燃焼装置を導入するには莫大なコストがかかります。予算を極限まで抑えながら、敷地境界における法規制基準値を確実にクリアできる、費用対効果に優れた対策が必要でした。
事前のアセスメントや検証テストを経て、ダクトに低コストで後付けできる「マイクロゲル消臭剤スプレー装置」を導入しました。ダクト内に独自の産業用無臭消臭剤を細かくスプレーし、大風量の排気ガスと気液接触させることで、不快な有機溶剤臭やビニール焦げ臭を効率的に中和消臭する設計を行いました。
さらに、風向風速計と連動して消臭剤の噴霧量を自動で調整するオリジナルの制御プログラムを組み込みました。これにより消臭剤の過剰な消費を最小限に抑制。導入後はダクト周辺への臭気拡散が激減し、規制基準値を完全にクリアした上で近隣からの苦情を無事に解決することができました。

| 設置場所 | アクリルスタンド製造工場 (レーザーカット工程・排気10系統) |
|---|---|
| 臭気対象 | アクリル加工時に発生する樹脂臭・焼き焦げ臭 |
| 脱臭方法 | 活性炭吸着脱臭 (活性炭脱臭装置 デオキーパー) |
アクリルスタンドを製造する工程において、アクリル板をレーザーでカットする際に生じる独特の樹脂臭や焦げ臭気が課題となっていました。このにおいが周辺に漂い、近隣住民から苦情が発生したため早急な対策が必要でした。影響範囲は最大300mに及ぶため、確実な解決が求められました。
レーザー加工機1台あたりの排気風量は比較的少量ですが、発生する臭気は非常に高濃度です。加工機の設置台数が多いほど周囲への影響は相乗的に高まるため、事前に詳細な現場把握を行う「臭気対策コンサルテーション」を導入し、最適な設備仕様と対策目標を設計することとなりました。
調査分析の結果、苦情を完全に解決するには排ガス臭気を90%以上除去する必要があることが判明。アクリルの甘酸っぱく焦げた臭質に適合する活性炭吸着方式を選定し、事前の検証デモテストで90%以上の脱臭効率を実証した上で、10系統の排気に「デオキーパー」10台を導入しました。
実機導入後の測定では、入口の臭気濃度10,000に対し、出口では500にまで低減。目標を上回る「脱臭効率95%」という極めて高い除去性能を確認しました。アクリル特有の不快な刺激臭や焦げたにおいは完全に解消され、周辺住民からの苦情も無事に解決へと至りました。
多孔質で優れた吸着性能を持つ活性炭フィルターを使用し、排気中に含まれる臭気分子を物理的に捕捉・除去する装置です。成形ラインから発生する比較的低〜中濃度の有機溶剤臭(VOC)や、プラスチック特有の複合的な焦げ臭に対して極めて高い汎用性と脱臭効果を発揮します。
設備構造がシンプルであるため初期費用を大幅に抑えられ、限られたスペースにもコンパクトに設置できる点が大きなメリットです。成形設備の排気ダクト末端への後付けも容易ですが、一定の吸着量に達した段階で定期的な活性炭フィルターの交換メンテナンスが必要となります。
成形時に発生する高濃度の有機溶剤ガスや油煙成分を、高温の熱によって直接または触媒を用いて酸化燃焼させ、水と二酸化炭素へと安全に分解する装置です。99%以上の極めて高い脱臭効率を誇り、大量のプラスチック原料を連続して高温成形する大規模な生産ラインにおいて圧倒的な効果を発揮します。
高濃度の臭気を根本から熱分解するため、処理後の排気はほぼ無臭化されます。導入時の初期コストや毎月の燃料費といった維持管理コストは大きくなりますが、排熱回収システムを導入することで、工場のエネルギー効率を最適化しランニングコストを抑える運用も可能です。
成形排気ダクト内へ気化した専用の消臭剤をダイレクトに噴霧・注入し、プラスチックが焼けたような刺激臭や溶剤臭と化学的に反応させて無臭化する方法です。大がかりな装置を設置するスペースがない現場や、既存ファンの能力(静圧)が低くフィルター式装置の導入が難しい排気系統に最適な選択肢です。
装置本体が非常にコンパクトであるため狭い屋外スペースでも柔軟に設置でき、設置に伴う排気システムの大幅な改造も必要ありません。複雑な制御がなく日常的なメンテナンスも容易なため、現場の負担を最小限に抑えながら近隣住民への臭気苦情対策をスピーディーに構築できます。
プラスチック成形工場における臭気対策では、脱臭装置の一次側(手前)で行う前処理が運用の成否を分けます。原料樹脂を高温で加熱融解する際、排気中には樹脂に含まれる可塑剤(添加剤)のミストや、揮発した微細な油煙が多量に含まれており、これらを未処理のまま脱臭装置へ導入することは厳禁です。
粘着性の高いミストや油煙が直接内部に入り込むと、活性炭の即時目詰まりや燃焼装置の触媒劣化を招き、脱臭能力が著しく低下するだけでなくダクト火災のリスクが高まります。そのため、前段に高性能なデミスターや粗塵フィルターを設置し、ミストや油分をあらかじめ物理的に捕集・除去することが不可欠です。
樹脂・プラスチック成形工場の悩みを解決する
脱臭装置の選び方
重要なのは臭気に合った脱臭装置を選ぶことです。成形工場内で扱うプラスチック原料の種類や、成形時の加熱温度によって発生する臭気は異なります。
ただし、目に見えない臭気成分を正確に特定するのは難しいため、臭気の発生場所に合った脱臭装置を選ぶのがおすすめです。
当メディアでは、臭気成分がよく分からないという方でも選びやすいよう、導入場所別におすすめの脱臭装置を厳選しました。食品工場におすすめの脱臭装置も調査していますので、現場に合った製品選びの材料としてご活用ください。
ポリスチレン(PS)やABS樹脂などの原料を成形加工する際、加熱融解時の熱分解によって発生する独特の薬品臭です。非常に低濃度であっても人間の鼻で感知されやすい不快臭であり、工場の敷地外へわずかでも漏洩すると、周辺の住民からプラスチック臭や化学薬品臭として即座に苦情に繋がる代表的な成分です。
排出される風量や濃度条件に合わせて、活性炭吸着による確実な捕捉や、燃焼式装置による高温での熱分解、あるいはダクト内での中和脱臭処理を適切に選定して対策を行います。
ポリ塩化ビニル(PVC)などの塩素系樹脂を成形する際、設定温度の超過や滞留による熱分解が原因で発生する、目や鼻を刺すような極めて強烈な刺激臭です。このガスは人体に対して有害であるため労働安全衛生の観点から厳格な排気管理が求められるだけでなく、金属を激しく腐食させる性質を持っています。
配管やファン、脱臭装置そのものを急速に劣化させる原因となるため、耐食性に優れた塩基性の薬液スクラバーを用いた中和洗浄処理や、専用の特殊添着炭による吸着対策が必須となります。
ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの汎用プラスチックを高温で射出・押出成形する際、樹脂や添加剤が部分分解して生じる焦げたようなにおいです。排気ダクトを通じて白煙や微細な油煙ミストを伴って拡散しやすい性質があり、近隣住民から油臭さや視覚的な白煙の指摘を受ける主因となります。
油煙が脱臭装置に悪影響を与えるため、前処理でのオイルミスト除去を徹底した上で、残るVOC成分を活性炭吸着や燃焼方式によって効率的に低減させるアプローチが基本となります。
アクリル樹脂(PMMA)などの成形工程において、加熱時に原料モノマーが揮発することで発生する、ツンとした特有の甘酸っぱい刺激臭です。においの閾値が非常に低いため、ごく微量の排出であっても周辺地域へ強い不快感を与える特徴があり、惣菜パックや工業用アクリル部品の成形現場で重視される成分です。
アクリル系の特有な臭気分子に対して高い親和性を持つ特殊活性炭を用いた吸着脱臭装置や、高温で完全に構造を破壊する触媒・蓄熱燃焼方式による対策が推奨されます。
他にも、場所(施設)ごとに脱臭装置の導入事例、発生しやすい臭気の種類、効果的な脱臭方法などをまとめています。自社が管理している施設のジャンル(または類似ジャンル)の記事をご一読ください。
導入場所とにおいの特性に着目し、それぞれの課題に適したおすすめの脱臭装置を紹介します。「種類が多くて、何が違うのかわからない」そんな方こそ、自分の現場に適した脱臭装置選びにお役立てください。

設置場所
排気ダクト
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | 605×400× 1000~820× 570×1400(mm) |
|---|---|
| 重量(kg) | 35~92 |
消臭成分が調理臭や油煙臭などと反応し、無臭物質へ変化させる。反応しきらない微量臭も、植物精油の香調により心地よい香りとなり効果を実感しやすい。
15種類の消臭剤が、水産加工から焼き菓子まで、食品の臭気に幅広く効果を発揮。植物由来の消臭成分で安全性が高く、厳しい安全・衛生管理基準もクリアする。

設置場所
乾燥炉排気・反応槽ベントライン など
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | - |
|---|---|
| 重量(kg) | - |
VOCや悪臭成分を化学反応で無害・無臭に変換。微量のシリコンやリンを含む排ガスも前処理で対応可能で、触媒毒を含む化学・薬品工場でも使える。
装置内部の空気を外に逃げにくい状態に保つことで、ダクト接続部からの臭い漏れを防止。揮発性の強い化学物質を扱う場合でも周囲環境への影響を抑える。

設置場所
屋外または既存脱臭槽内
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | 6~12×9 (54~108㎡) |
|---|---|
| 重量(kg) | - |
堆肥化・発酵工程から発生する硫化系臭気や3,000ppmクラスの高濃度アンモニアへ対応。強臭環境においても、安定した脱臭性能を発揮する。
微生物の力で分解するため、燃焼系設備のような高エネルギー消費が不要。さらに低圧ブロワ採用で電力消費を抑制し、24時間連続運転でもコストを抑える。