スーパーのバックヤードで発生する臭気は、売り場のイメージ低下や近隣からの苦情だけでなく、従業員の定着率にも影響を及ぼしうる深刻な問題です。
本記事では、バックヤードへ脱臭装置を導入して環境改善を図った事例とともに、現場の状況に即した効果的な対策方法を詳しく解説していきます。
鼻や目にツンとくる刺激臭です。バックヤードでは、生ゴミや食材残渣に含まれるタンパク質が細菌によって分解される過程で発生します。
特に回収を待つゴミ置き場や、清掃の行き届きにくい排水溝などで生じやすく、従業員の不快感や職場環境の悪化を招く主要な物質の一つといえます。
腐った卵のような不快臭です。排水溝、側溝、ピット、汚泥の堆積場所など、汚れが溜まって酸素が不足する「嫌気条件」が整うと発生する傾向にあります。
金属を腐食させる性質も持つため、放置すれば臭いだけでなく店舗設備の劣化を早める要因にもなり得ます。建物の資産価値を守る上でも、適切な管理が求められます。
不快感の強い玉ねぎや下水のような臭気です。主にグリストラップ(油脂分離槽)の清掃頻度が不足している場合や、排水管内に滞留した油脂類の腐敗によって生じます。
人間がにおいを感じる閾値(最小濃度)が低いため、わずかな漏洩であっても売り場への流入や近隣からの指摘を招きやすい成分として知られています。
鮮魚特有の生臭さの原因物質です。魚介類の加工工程やアラなどの残渣保管場所、廃棄物を搬出する際などに臭気が漏洩しやすくなります。
水分が介在することでより顕著に感じられる性質があり、水場の多いバックヤードでは除菌と脱臭を並行して行う環境改善が重要です。
スーパーのバックヤードでは、惣菜調理による油臭や鮮魚の生臭さ、生ゴミ・グリストラップから生じる腐敗臭など、発生場所によって異なる臭気への対応が必要です。特に住宅地に立地する店舗や、マンション・ホテルなどが入る複合施設では、バックヤードから排出された臭気が周辺の生活環境へ影響しないよう配慮しなければなりません。
脱臭装置を選ぶ際は、臭気の種類や濃度だけでなく、処理風量、油分や水分の量、設置スペース、営業時間、日常的なメンテナンスにかけられる工数なども確認します。導入価格だけでなく、維持費や交換部品を含むトータルコストで比較することが重要です。
悪臭防止法では、規制地域内の工場・事業場について、敷地境界線における「1号規制基準」、気体排出口における「2号規制基準」、排出水における「3号規制基準」が定められています。
スーパーでは、フライヤーから発生する揚げ物臭、鮮魚加工時の生臭さ、生ゴミや排水設備から発生する腐敗臭など、複数のにおいが同時に問題となることがあります。一般的な調理臭であっても、毎日継続して住宅やホテルの客室などへ流入すれば、生活環境上の不快な臭気として指摘される可能性があります。
特に複合施設や住宅地にある店舗では、排気口直後の臭気だけを見るのではなく、風向きや排気口の位置、周辺建物との距離を踏まえ、実際に敷地境界線や周辺環境でどの程度の臭気になるかを確認することが重要です。
なお、悪臭防止法では、特定悪臭物質の濃度による規制と、人間の嗅覚によって複合臭を評価する臭気指数規制があります。適用される方式や具体的な基準値は地域によって異なるため、所在地を管轄する自治体の基準を確認しましょう。臭気指数規制が採用されている場合は、敷地境界線の基準値と現状の臭気を比較し、必要な低減性能を設定したうえで脱臭設備を選定します。
スーパーのバックヤードで検討される代表的な脱臭方式について、臭気への適性や費用、維持管理の傾向を比較しました。
| 方式名 | 得意な臭気 | 初期費用の 目安 |
維持費用の 目安 |
メンテナンス頻度 | 必要な 設置スペース |
|---|---|---|---|---|---|
| オゾン脱臭 | 生ゴミ臭:○~◎ 鮮魚臭:○ 調理臭:△~○ |
低~中 | 低~中 電力・消耗部品など |
低~中 発生器・濃度管理などを定期確認 |
小 |
| 活性炭脱臭 | 生ゴミ臭:○ 鮮魚臭:○ 調理臭:○ ※油煙は前処理推奨 |
低~中 | 中 活性炭交換費など |
定期 吸着性能を確認して交換 |
小~中 |
| スクラバー脱臭 | 生ゴミ臭:○ 鮮魚臭:○ 調理臭:○ 高温・多湿排気:◎ |
中~高 | 中~高 水・薬品・排水処理費など |
高 薬液・ノズル・循環水などを管理 |
中~大 |
| バイオフィルター 脱臭 |
生ゴミ臭:○ 鮮魚臭:△~○ 腐敗臭:◎ 調理臭:△ |
中~高 | 低~中 | 中 水分・温度・充填材などを管理 |
大 |
※上表は各方式の一般的な傾向を比較したものです。実際の設備費や脱臭性能、維持費、メンテナンス頻度は、臭気濃度、処理風量、温度・湿度、油分量、稼働時間、製品仕様などによって異なります。
例えば、ゴミ置き場や鮮魚加工場など設置スペースが限られる場所では、比較的コンパクトに導入できるオゾン脱臭や活性炭脱臭が候補となります。オゾンは臭気対策と衛生管理を組み合わせやすい一方、使用する空間や製品に応じた濃度・運転管理が必要です。
惣菜調理場のように大量の排気が発生し、高温・多湿となる系統では、スクラバーによる洗浄処理が候補になります。ただし、水や薬液、排水処理設備などが必要になるため、十分な設置スペースと維持管理体制を確保できるかも確認しましょう。
一方、排水ピットやグリストラップなどから継続的に発生する腐敗臭では、バイオフィルターを利用できるケースがあります。スーパーでは発生源によって臭気条件が大きく異なるため、一つの方式ですべてを処理するのではなく、「調理場」「鮮魚加工場」「ゴミ置き場」「排水設備」ごとに適した方式を使い分けることも重要です。
多孔質の活性炭に臭気分子を物理的に吸着させる手法です。バックヤードの事務室や休憩室に漏れ出す微細な調理臭・資材臭の低減に適しています。
低濃度かつ乾燥した環境下での脱臭に強みを持ち、コンパクトなフィルター式が多いため、限られたスペースへの後付け設置が容易な点も利点といえるでしょう。
水や薬液のシャワーで排気を洗浄し、臭気成分を中和・除去する方式です。
惣菜コーナーのフライヤーから出る油分を含んだ高温・多湿な排気に適合します。
脱臭と同時に除塵や冷却を行える特性があり、ダクト内の汚れ蓄積を抑制する効果も期待できるでしょう。
オゾンの酸化作用により、臭気成分を分子レベルで分解する手法です。生ゴミ置き場や鮮魚加工場の特有な生臭さに対し、優れた抑制効果を発揮します。
除菌効果を併せ持つため、衛生管理が重視される現場に選ばれています。濃度管理を適切に行うことで、壁や床に付着した「染み付き臭」の低減にもアプローチが可能です。
微生物の分解能力を利用して、臭気成分を無害化する方法です。排水ピットやグリストラップ周辺から漂う下水のような不快臭(硫化水素など)に即しています。
薬品をほぼ使用しないため維持費を抑えやすく、環境負荷の低減にも寄与します。
スーパーの惣菜調理では、フライヤーや炒め物などから大量の油煙が発生します。排気中には微細な油滴であるオイルミストが含まれており、そのまま後段の脱臭装置へ送り込むと、設備の性能低下やメンテナンス負荷の増大につながります。
特に活性炭やフィルターによる脱臭では、油分が表面に付着することで目詰まりが進み、臭気成分を吸着できる領域が減少して交換周期が短くなる可能性があります。また、油脂が排気ダクト内へ蓄積すると、清掃負担が増えるだけでなく火災時の延焼リスクを高める要因にもなるため注意が必要です。
そのため、惣菜厨房ではメインの脱臭装置だけを設置するのではなく、前段でオイルミストをできる限り除去してから臭気処理を行うことが、長期的な安定運用につながります。
オイルミストの前処理には、比較的大きな油滴を物理的に捕集するグリスフィルターが利用できます。さらに微細な油煙が多い場合には、電気的に粒子を帯電させて捕集する電気集塵機などを組み合わせ、段階的に油分を除去する方法もあります。
前処理設備を設置することで、後段の活性炭や脱臭フィルターなどへ流入する油分を減らし、フィルターの目詰まりや性能低下を抑制できます。結果として、交換周期を延ばし、フィルター代や交換作業、装置内部の清掃にかかる費用を抑えやすくなります。
前処理には一定の導入費用がかかりますが、スーパーのように年間を通して惣菜調理を続ける施設では、「オイルミスト除去+脱臭」の構成で長期的なランニングコストを比較することが重要です。
スーパーのバックヤードの悩みを
解決する脱臭装置の選び方
重要なのは臭気に合った脱臭装置を選ぶことです。同じスーパーのバックヤードでも、加工・調理場、保管場所(冷蔵・冷凍庫・倉庫)、事務室、ゴミ捨て場など、具体的な場所によって発生する臭気の種類は変わってきます。
ただし、目に見えない臭気成分を正確に特定するのは難しいため、臭気の発生場所に合った脱臭装置を選ぶのがおすすめです。
当メディアでは、臭気成分がよく分からないという方でも選びやすいよう、導入場所別におすすめの脱臭装置を厳選しました。食品工場におすすめの脱臭装置も調査していますので、現場に合った製品選びの材料としてご活用ください。
| 設置場所 | 厨房内フード下 (グリスフィルター側面へ接続) |
|---|---|
| 臭気対象 | 惣菜調理(フライヤー揚げ物)の臭気 |
| 脱臭方法 | 中和脱臭 |
上層階にホテルが入居する複合施設の1階に出店したスーパーマーケットの事例です。
周辺は新築マンションも多い商業地域であり、近隣住民やホテル利用者への環境配慮として、惣菜調理のフライヤーから発生する油煙の臭気対策が不可欠となっていました。
しかし、厨房内は調理機器が密集しており、大型装置の設置スペースを確保するのが困難な状況。
そのため、限られた空きスペースを有効活用しつつ、実効性の高い脱臭手法が選定の条件となりました。
系列店での運用実績に加え、壁掛け可能なコンパクト設計が導入の決め手となり、日本デオドールの中和脱臭装置「DMDシリーズ」を採用。省スペース設計により、作業動線を妨げることなく設置できています。
排気の油分による影響を考慮し、グリスフィルター通過後に消臭剤「マイルドブレンド」を噴霧する構成。
導入後は周辺からの苦情も寄せられず良好な状態を保っており、その実績から他店舗への追加採用も進んでいます。
| 設置場所 | スーパーマーケット (惣菜・鮮魚コーナーバックヤード) |
|---|---|
| 臭気対象 | 惣菜・鮮魚の加工に伴う臭気 |
| 脱臭方法 | オゾン水による洗浄(脱臭は清掃・衛生管理における副次的効果) |
スーパーマーケットのバックヤードにおける導入事例です。惣菜や鮮魚を扱う現場では、食材の加工処理に伴う独特の生臭さや雑菌の繁殖抑制が常に求められます。
安全な食品を提供し続けるためには、日々の清掃を補完する、より高度な衛生管理体制の構築が重要。
脱臭と除菌の相乗効果を期待し、オゾンを活用したシステムの導入が検討されました。
オゾン水とオゾンガスを生成可能な「エルくりんDX」を導入しました。UV式濃度計を標準装備しており、安定したオゾン濃度の管理が行えるモデルです。
導入後は、オゾン水を用いた洗浄をルーチン化したことで、惣菜・鮮魚各コーナーのバックヤードから不快な臭気が大幅に抑制されました。
衛生面での信頼性が高まっただけでなく、スタッフが健やかに働ける職場環境づくりにも寄与しています。
| 設置場所 | スーパーマーケット(畜産加工所・ゴミ置き場などのバックヤード) |
|---|---|
| 臭気対象 | 食品加工臭、生ゴミ臭 |
| 脱臭方法 | 光触媒脱臭、オゾン脱臭 |
スーパーマーケットの食品加工現場において、まな板や調理台の衛生維持は管理上の重要事項です。特に畜産加工所などでは、落下菌や表面の雑菌への対策が常に求められます。
あわせて、大量に発生する生ゴミから漂う不快な臭気や、それに伴う害虫の飛来も施設運営上の懸念点であり、除菌と脱臭を並行して行える包括的な対策が不可欠となっていました。
光触媒脱臭とオゾン脱臭の機能を併せ持つ、エアピュアの脱臭システムが導入されました。殺菌用紫外線ランプにオゾン発生機能を付加した設計により、除菌と脱臭の相乗効果を追求。
加工場の衛生管理を補完するとともに、ゴミ置き場の脱臭と害虫対策(虫除け)を同時に図ることで、清潔なバックヤード環境の維持に寄与しています。
他にも、場所(施設)ごとに脱臭装置の導入事例、発生しやすい臭気の種類、効果的な脱臭方法などをまとめています。自社が管理している施設のジャンル(または類似ジャンル)の記事をご一読ください。
導入場所とにおいの特性に着目し、それぞれの課題に適したおすすめの脱臭装置を紹介します。「種類が多くて、何が違うのかわからない」そんな方こそ、自分の現場に適した脱臭装置選びにお役立てください。

設置場所
排気ダクト
対応できる臭い
調理油/魚類/肉類/揚げ物/煮炊き排気/生ゴミ/カビ/硫化水素/スチレン/硫化メチル
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | 605×400× 1000~820× 570×1400(mm) |
|---|---|
| 重量(kg) | 35~92 |
消臭成分が調理臭や油煙臭などと反応し、無臭物質へ変化させる。反応しきらない微量臭も、植物精油の香調により心地よい香りとなり効果を実感しやすい。
15種類の消臭剤が、水産加工から焼き菓子まで、食品の臭気に幅広く効果を発揮。植物由来の消臭成分で安全性が高く、厳しい安全・衛生管理基準もクリアする。

設置場所
乾燥炉排気・反応槽ベントライン など
対応できる臭い
香料/樹脂/フェノール/キシレン/酢酸ブチル/コーティング機排気/酢酸エチル/シアン化水素/アンモニア/1,2,4-トリメチルベンゼン
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | - |
|---|---|
| 重量(kg) | - |
VOCや悪臭成分を化学反応で無害・無臭に変換。微量のシリコンやリンを含む排ガスも前処理で対応可能で、触媒毒を含む化学・薬品工場でも使える。
装置内部の空気を外に逃げにくい状態に保つことで、ダクト接続部からの臭い漏れを防止。揮発性の強い化学物質を扱う場合でも周囲環境への影響を抑える。

設置場所
屋外または既存脱臭槽内
対応できる臭い
高濃度アンモニア/硫化水素/硫黄系臭気
| 寸法 (mm/幅・奥行・高さ) | 6~12×9 (54~108㎡) |
|---|---|
| 重量(kg) | - |
堆肥化・発酵工程から発生する硫化系臭気や3,000ppmクラスの高濃度アンモニアへ対応。強臭環境においても、安定した脱臭性能を発揮する。
微生物の力で分解するため、燃焼系設備のような高エネルギー消費が不要。さらに低圧ブロワ採用で電力消費を抑制し、24時間連続運転でもコストを抑える。