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「下水処理」の悪臭問題の現状・対策

年間数百件の苦情が寄せられるといわれている下水処理の悪臭。多くの人が不快に感じる下水処理の臭いが発生する原因と、臭い対策についてまとめています。

下水処理の臭いの発生メカニズム

東京都下水道局に寄せられる悪臭に関する苦情は、年間600件を超えます。下水処理の臭いは、下水道管のたるみやビルピットに汚水が溜まり、その汚水が腐ることで硫化水素などが発生することが原因です。まずは、それぞれのケースにおける、硫化水素発生のメカニズムについて見てみましょう。

(参照:ビルピット臭気対策マニュアル https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/noise/offensive_odors/building_pits.files/kankyo3776.pdf
平成21年度調査時点。

下水道管から硫化水素が発生する場合

下水道管の場合、下水道本管のたるみに汚水が溜まり、時間の経過によって汚水が腐敗することで硫化水素が発生。これが、降雨時など大量の雨水が流れたときに撹拌され、硫化水素が下水道管内に充満し、雨水桝などから地上に拡散していきます。雨水桝などに防臭弁が付けられていたとしても、隙間があったり、劣化・破損箇所があれば、そこから臭いが漏れてしまいます。

ビルピットから硫化水素が発生する場合

ビルピットとは、建物内で発生した排水を一時的に貯留する排水槽のこと。ビルの地下にある厨房やトイレは、下水道管よりも低い位置にあるため、自然流下で排水することはできません。そのため、地下で発生した排水をポンプでくみ上げて下水道に排除するため、一時的に排水を溜めておく貯水槽が必要なのです。

このビルピットに溜められた汚水が、時間の経過によって腐敗し、硫化水素が発生。排水ポンプを稼働した際、この硫化水素が汚水と一緒に下水道管内に排出されて管内に充満します。充満した硫化水素は、建物内の排水管の接続不良箇所や破損箇所、防臭トラップの未設置によって、下水道管から建物内に侵入し、悪臭を放ちます。

下水処理の臭いの種類

下水処理の臭いの元となるのは、硫化水素のほか、メチルメルカプタン、硫化メチル、アンモニアなど。硫化水素は腐った卵のような臭い、メチルメルカプタンは腐った玉ねぎのような臭い、硫化メチルは腐ったキャベツのような臭い、アンモニアは尿のような臭いがするといわれています。

これらの臭いは、人に不快感を与えるだけでなく、健康面にも悪影響を及ぼします。また、硫化水素はコンクリートや金属と反応して施設機器の腐食を引き起こす可能性があります。

下水処理の臭いに対する対策

下水処理の臭いの大半はビルピットが原因といわれています。ここでは、おもにビルピットの臭い対策について紹介します。

硫化水素の発生を防ぐ

ビルピットの臭いはおもに硫化水素によるものなので、まずは、硫化水素を発生させないようにする必要があります。

硫化水素が発生する要因は

  • 硫黄化合物が存在すること
  • 硫酸塩還元細菌が存在すること
  • 嫌気性の環境が存在すること

の3つの条件が揃っていることです。この条件を揃えないようにするためには、定期的な清掃と附帯設備の点検が欠かせません。東京都のビルピット対策指導要綱では、排水槽は1カ月に1回の定期点検を行い、4カ月ごとに1回以上の清掃、阻集器は7日ごとに1回以上(捕集物の除去は使用するごと)の清掃、排水管や通気管は必要に応じて内部の異物をすることが推奨されます。

また、硫化水素の濃度は、排水槽に溜まった水量と時間に比例するといわれているため、排水槽の水位を下げると同時に起動水位を下げ、有効容量を減らし、短い間隔でポンプアップさせるという方法も有効です。オフィスビルなどで休日や夜間の排水の流入量が少なくなる場合には、ポンプ操作盤にタイマーを取り付けて、一定時間ごとに排水させることも可能です。

このほか、曝気・撹拌する装置を取り付けて水に酸素を送り込んでかき混ぜ、排水槽内の水の腐敗を防ぐという方法もあります。

建物内の排水管の確認・修繕

建物内の排水管や排水器具が経年劣化などによって破損し、そこから臭気が建物内に拡散していることがあります。必要な場所に防臭トラップが確認されているか、また、トラップ内に水が満たされているか、排水管の破損や接続不良になっている箇所がないかを確認し、該当箇所があれば、直ちに修繕を行いましょう。

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